Reason.3
昔の矯正治療では永久歯を抜いて治すことが多く、「矯正=抜歯」というイメージを持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、治療技術は進歩し、今や抜歯に対する治療概念も変化してまいりました。
「本来備わった歯は抜かない」それが我々の基本方針です。
乳歯・混合歯列期のお子様ならば、顎の成長を適切に促すことで、歯を並べるスペースを充分に獲得することができるため、結果として永久歯の抜歯が不要となります。
また、中学生以降の永久歯列期や成人の方でも、事前の検査によってお口の中の各部位を丹念に調べ、歯を並べ得る有効スペースを探し出しますので、非抜歯の診断を優先的に導くことが可能なのです。
但し、不正咬合と一言で表現される歯並びも、実際には出っ歯、受け口、開咬、叢生、顎変形など、様々な歯並びがあり、軽度なものから重度な症状まで様々な方がいらっしゃいます。
人間の身体という生体を扱う以上、生物学的な構造を無視して積木を並べるように、何でも自由自在に動かせるというものでもありません。
「100%歯を抜かないで大丈夫」というお約束ができないのは、しっかりと咬むことができる機能的な咬み合わせを構築することは当然のことながら、誰が見ても美しいと感じる審美的歯並び、口元、顔貌をも達成させなくては患者様の満足の得られるものではなく、仕上がりのご要望に応じて、止むを得ず抜歯をしなくてはならない場合があるからです。
無理な非抜歯治療を行った結果、ガタガタと乱れた並びは整ったものの、口元が突出して見栄えが悪くなり困ったという患者様を多く見てまいりました。
矯正治療には、適切な診断に基づく診療が重要であることは言うまでもありません。
とは言え、私どものクリニックでは、乳歯・混合歯列から治療を開始する方のほとんどは抜歯しないように、また成人の方でも可能な限り非抜歯で、しかも機能的にも審美的にも満足できる方針を導くよう常に考えております。